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B02 計画研究

B02-1:近接場分光(SNOM)による特異構造の発光機構解明と制御

  • 研究代表者:川上 養一(京都大学・教授・B02総括)
  • 研究分担者:船戸 充(京都大学・准教授)

本研究では、半極性面マイクロファセット、ナノコラムなどの(Al,In,Ga)N系半導体3次元構造からなる特異構造に着目して、InGaN系ナノ構造の発光波長制御(可視全域カバー)や高効率発光デバイス(究極の100%内部量子効率を目指して)への設計指針を明確にします。具体的には、 InGaN系ナノ構造評価のために独自に開発した二探針SNOMなどの評価法を駆使して、特異構造における励起子・キャリアの空間移動を可視化し、発光再結合機構を解明します。さらに、深紫外域で十分な透過性を持つ近接場プローブ材料・技術を開発し、AlリッチAlGaNのナノ構造光物性を評価するための手法を確立します。これにより、InGaN系のみならずAlGaN系特異構造における空間・時間分解再結合ダイナミクスの研究にも展開します。また、プラズモニクス効果に着目し、組成変調した特異構造における発光波長の選択や高効率化の物理機構を評価・解析します。これらの研究によって、光機能性発現を目指した特異構造設計のための明確な指針が得られ、蛍光体フリーテーラーメイド照明や超高効率深紫外発光素子などに繋がるものと期待されます。

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B02-2:時間空間分解カソードルミネッセンスによる特異構造の光物性解明と機能性探索

  • 研究代表者:秩父 重英(東北大学・教授)
  • 研究分担者:小島 一信(東北大学・准教授)
  • 研究分担者:嶋 紘平(東北大学・助教)

不完全性や不均一性を包含する特異構造は、バルクや表面等と異種界面を形成します。そのような構造体の局所的なキャリア緩和過程や発光過程を理解するには、その構造を狙い打ちして発光ダイナミクスを計測する必要があります。私たちは、フェムト秒チタンサファイアレーザの高調波によりAu等の金属を励起してフェムト~ピコ秒パルス電子線を発生させる「パルス光電子銃」を走査型電子顕微鏡に組み込んで構築した、日本に唯一の時間空間同時分解カソードルミネッセンス(STRCL)計測装置を用い、特異構造の発光強度、波長、寿命等の多次元イメージングを行います。本手法では、集束電子線がキャリア励起源となるためバンドギャップの制限を受けずに特異構造の評価が行えます。B02内はもちろん、A01・A02が形成する特異構造の光物性解明と、光機能性発現のための設計指針を与えるデータ収集をB01と協力して行い、キャリアの実空間移動や量子効果を解明して新しい光科学の創成に貢献します。

フェムト秒集束パルス電子線を用いた時間空間同時分解カソードルミネッセンス概念図
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B02-3:結晶特異構造における励起子多体効果の光物性評価と光機能性探索

  • 研究代表者:山田 陽一(山口大学・教授)
  • 研究分担者:倉井 聡(山口大学・助教)

励起子工学の観点から、励起子分子や励起子および励起子分子間の非弾性散乱など、励起子多体効果に着目した研究を推進します。具体的には、窒化物系半導体が本来的に有する大きな励起子効果を積極的に利用することにより、未だ実現されていない高密度励起子系の輻射再結合過程を利用した高機能かつ高効率な励起子系発光デバイスの構造最適化の構築を目指します。特に、混晶不均一系および低次元不均一系という構造不完全性に起因した結晶特異構造が有する潜在能力を励起子系の局在という現象を通して評価し、励起子系の光学遷移過程における高振動子強度の実現を図っていきます。同時に、励起子系の局在を制御するという観点から、デバイス構造の最適化の構築を目指します。測定に必要となる特異構造を有する試料は、A01グループと連携し、その構造や成長条件を指示して提供を受けます。高出力波長可変色素レーザを用いた選択・共鳴励起分光法、紫外フェムト秒レーザを用いた時間分解分光法、カソードルミネッセンス分光装置を用いた空間分解分光法により、励起子系の次元性や局在性と多体効果との相関を解明し、不均一系において高密度励起子系が有する光機能性を最大限に引き出すための明確なデバイス設計指針を得ていきます。

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B02 公募研究

B02-19-1:輻射・非輻射再結合の同時観測とそれに基づく特異構造の電子状態の理論モデル構築

  • 研究代表者:山口 敦史(金沢工業大学・教授)

多様な特異構造を含む窒化物半導体においては、そのキャリアダイナミクスを理解する上で、輻射再結合と非輻射再結合の2つの過程の各々のメカニズムを明らかにすることが重要となります。本研究では、同一の光励起条件下で、この2つの過程を同時計測する光音響・発光同時計測法を用い、特異構造内での内部量子効率を正確に求めていきます。さらに、時間分解発光測定などの光学実験と理論モデル計算をこれに組み合わせることにより、特異構造の電子状態とキャリアダイナミクスを包括的に理解することを目指します。

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B02-19-2:電子-格子相互作用による特異構造の移動・変形の理論

  • 研究代表者:小田 将人(和歌山大学・講師)

窒化物半導体は、発光素子の画期的な新材料として大成功をおさめ、さらには次世代パワー素子の候補としても期待されています。しかし、応用研究が推進される一方で、点欠陥や転位をはじめとする特異構造が移動して集合することで、電流が流れにくくなり、素子劣化を引き起こすという問題が未解決になっています。本研究では、図のように、特異構造が移動・変形するミクロな機構を、電子?格子相互作用に注目することで明らかにし、その制御法を見つけることを目的としています。特異構造の移動・変形が制御できるようになると、素子寿命が長くなる、新しい機能を持つ構造を作り出す技術につながる、などが期待できます。

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B02-19-3:特異格子配列InGaNナノコラムを用いたプラズモニックナノ構造の作製と光機能制御

  • 大音 隆男(山形大学・助教)

InGaN系発光素子は、In組成の増加に伴う長波長化により発光効率が著しく低下し、解決が求められています。本研究では、柱状ナノ結晶である“ナノコラム(ナノワイヤ)”を用いた特異格子配列の“プラズモニック結晶”をInGaN系発光素子に導入することで、ナノ構造効果と表面プラズモン結合を同時に発現させ、発光効率が低い領域の大幅な改善を目指します。また、特異格子配列が光学特性に与える影響について詳細に調査することで、従来構造では実現できない光機能性を有した発光デバイスを提案し、その開発を目指します。

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B02-19-4:特異表面ナノ構造体と酸化物半導体メタマテリアルの光学制御

  • 松井 裕章(東京大学・准教授)

本研究は、II-IV族半導体ZnOの薄膜成長中に自己形成される特異的な表面ナノ細線構造に着目します。従来の薄膜成長では、layer-by-layer成長による2次元面を持つ“完全な薄膜表面”が、異種接合や界面制御において重要な役割を果たしました。本課題は、自己成長による特異的な表面ナノ構造を導入して、ZnOに基づくハイパーパボリックメタマテリアル(ZnO-HMMs)とその表面プラズモンの光学制御を実施します。特に、表面ナノ構造の成長過程と結晶内の構造欠陥の関係を解明し、表面ナノ細線の構造サイズ制御を行い、近赤外域における新しい光学応用を創出します。

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B02-19-5:単原子層物質のナノスケール特異構造制御による新奇光デバイスの創成

  • 矢野 隆章(東京工業大学・助教)

本研究では、単原子層化合物半導体表面に特異構造(格子歪み・格子欠陥)を局所的に(ナノスケールで)導入し、その特異構造に起因する光物性変化を”その場”ナノ分光計測することによって、単原子層物質表面の特異構造と光・電子物性との相関をナノ分光学的に解明します。さらに、単原子層表面の特異構造を空間的に局所制御することによって、新奇な機能性ナノ光デバイスを創成します。

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B02-19-6:プロトン欠陥有機結晶のフォトン照射による機能開拓

  • 小林 由佳(物質・材料研究機構・主幹研究員)

水素結合ネットワークによって安定化されたプロトン欠陥をドーパントとする有機結晶は、分子設計により半導体から金属に至るまで伝導性を制御することが可能です。ここでは局在した開殻分子と閉殻分子が共存しており、その基底状態はプロトン欠陥サイトとπ軌道が拮抗または混成したような特殊な電子配置で記述されます。本研究では、このプロトン欠陥有機結晶に光やマイクロ波を照射して電子励起を促し、様々な電子配置を発生させることにより、光伝導性を始めとする多彩な新規物性を開拓します。

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