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B01 計画研究

B01-1:結晶特異構造およびその挙動のマルチスケール構造解析評価

  • 研究代表者:酒井 朗(大阪大学・教授・B01総括)
  • 研究分担者:今井 康彦(高輝度光科学研究センター・副主幹研究員)

高輝度放射光による100nm空間分解能とサブナノ秒時間分解能を有するその場X線回折法は、半導体結晶やデバイスに存在する歪やドメインの広範囲局所領域精密計測を実現し、格子欠陥の極微構造や3次元空間分布を検出する透過電子顕微鏡法等との有機的併用によって、ナノメートル~ミリメートルにわたるマルチスケール構造評価を可能とします。本研究では、特に窒化物半導体結晶中のナノボイドや転位、圧電分極に影響する極性/非極性格子等の特異構造に着目し、他グループで開発された特異構造制御型窒化物結晶やデバイスを対象に、3次元精密構造解析を行います。また、その場観測技術を駆使して、電場等外部刺激に応答する特異構造のダイナミクスを解明することで、特異構造が結晶特性・デバイス特性に及ぼす能動的機能を探索します。それによって窒化物結晶の飛躍的な機能向上を図り、拡張結晶学の学術的構築と新規グリーンエレクトロニクスの創成に貢献します。

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B01-2:陽電子消滅による結晶特異構造のキャリア捕獲・散乱ダイナミックスの評価

  • 研究代表者:上殿 明良(筑波大学・教授)
  • 研究分担者:大島 永康(産業技術総合研究所・研究グループ長)
  • 研究分担者:石橋 章司(産業技術総合研究所・研究チーム長)
  • 研究分担者:角谷 正友(物質・材料研究機構・主席研究員)
  • 研究分担者:奥村 宏典(筑波大学・助教)

陽電子消滅は、特異構造である原子空孔を感度良く非破壊で検出、その種類、濃度、深さ分布を決定できる手法です(図(A))。本研究の目的は、(i)空孔のキャリア捕獲による励起状態を検出する手法を開発し、その光応答性を研究すること、また(ii)陽電子がヘテロ構造や表面に存在する電界に敏感に反応する正の点電荷であることを利用して、陽電子を電界プローブとして使用するための装置を構築することです(図B及びC)。陽電子ビーム、単色光、電子ビーム、また電圧印加システム等からなるビームラインを開発し、上記の目的を達成します。既存の陽電子実験装置、また新たに開発した装置を駆使し、同領域研究者との密接な協力関係をもとに、特異構造の物性を学術的な観点から研究します。また、これを制御する手法を提案、デバイス設計指針を提供します。

図.(A)原子空孔による陽電子捕獲と消滅γ線放出、(B)陽電子を含むマルチプローブによる評価、(C)陽電子でみた試料構造。
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B01-3:フォノン科学による特異構造3次元分光評価と応用欠陥物性

  • 研究代表者:石谷 善博(千葉大学・教授)
  • 研究分担者:篠塚 雄三(和歌山大学・教授)
  • 研究分担者:馬 蓓(千葉大学・助教)

本研究では、格子振動の量子波(フォノン)とキャリアの特異な相互作用を用いた特異構造の物性解明・利用を行います。

(1)特異構造・物性の空間分解非破壊評価
・赤外分光や共焦点顕微ラマン分光による転位や点欠陥近傍の歪やポテンシャル場の3次元像を得ます。
・加工基板上の結晶やデバイス中の3次元特異構造界面の結晶歪などの構造評価と界面近傍の格子振動・電子動的状態の解明を行います。
アンテナ構造の電場増強策等による数桁の赤外分光感度上昇、2波長照射の共鳴共焦点ラマン分光および理論解析によりキャリア・励起子ダイナミクスを支配する特異構造の構造特性解明などを達成し、欠陥物性からデバイス物理への架橋が構築されます。
(2) (1)を基盤とした欠陥物性の有効利用法についての展開
フォノンの局在・非局在制御による、キャリア・フォノン相互作用増大と太陽電池量子井戸からのキャリア取出し効率増大、量子井戸の冷却とキャリア移動度や発光効率の増加について追求します。

 

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B01 公募研究

B01-19-1:窒化物半導体の特異構造におけるフォノン挙動の理論解析

  • 研究代表者:渡邉 聡 (東京大学・教授)

窒化物半導体のフォノン物性は発光デバイスやパワーデバイスにおいて重要ですが、欠陥等の特異構造におけるフォノン物性はまだよくわかっているとはいえません。本研究では、機械学習を用い、強い分極や複数の荷電状態の存在といった窒化物半導体の特徴を考慮しつつ、フォノンの振舞いの第一原理計算結果をよく再現でき、計算負荷は第一原理計算より軽い原子間ポテンシャルを開発します。そして開発したポテンシャルを用いて窒化物半導体におけるフォノンバンド構造やフォノン状態密度を計算し、特異構造の導入によるフォノンの振舞いの変化を明らかにします。

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B01-19-2:多光子励起フォトルミネッセンスによる結晶欠陥の非侵襲観察

  • 研究代表者:谷川 智之(大阪大学・准教授)

結晶欠陥が大量に含まれる次世代半導体材料におけるデバイス開発において、結晶欠陥を非破壊で解析する技術は重要です。本研究では、生体組織の非侵襲イメージングに用いられている多光子顕微鏡を半導体材料のイメージングに活用し、非破壊手法に基づく結晶欠陥の観察技術について研究します。GaN結晶に大量に存在する貫通転位について、光学的性質および結晶工学的性質を調べます。次に、これらの性質を基に貫通転位を分類する方法の確立を目指します。さらに、転位同士が反応および増殖する構造を三次元観察し、それらの機構の解明を試みます。

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B01-19-3:窒化物および酸化物半導体の局所電子状態・光学特性に及ぼす弾性場の影響

  • 研究代表者:木口 賢紀(東北大学・准教授)

窒化物・酸化物半導体薄膜では、転位など格子欠陥やエピタキシャル成長に伴う残留歪みといった特異構造に付随する周期性や結合状態の乱れやそれらの空間的な分布状態は結晶成長や発光デバイスやパワーエレクトロニクスの性質に大きな影響を及ぼします。本研究では、貫通転位に代表される結晶の非完全性がもたらす局所弾性場が発光デバイスの要である量子井戸構造に及ぼす影響を局所構造・電子状態やマクロな形態をマルチスケールで調べ、非破壊3次元構造解析グループと相補的な立場から特異構造の解明に取り組みます。

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