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A02 計画研究

A02-1:Ⅲ族窒化物ナノラミネート特異構造を用いたダイヤモンド電子デバイスの開発

  • 研究代表者:小出 康夫(物質・材料研究機構・理事・A02総括)
  • 研究分担者:井村 将隆(物質・材料研究機構・主任研究員)
  • 研究分担者:廖 梅勇(物質・材料研究機構・主幹研究員)
  • 研究分担者:劉 江偉(物質・材料研究機構・独立研究者)

誘電体と半導体の層状構造からなる誘電薄膜(ナノラミネート薄膜と呼ばれる)は、ダイポール積層構造に起因するマクスウェル‐ワグナー誘電緩和効果よって比誘電率k=1000以上の巨大誘電率を持つことが、Al2O3/TiO2ナノラミネート薄膜において近年実証されています。本研究の目的は、誘電体i-AlNと導電体c-GaNをそれぞれ1nm以下の原子層状構造からなるナノラミネート特異構造を作製し、少なくともk=100以上の高誘電率薄膜をダイヤモンド単結晶上に作製すること、さらにそのi-AlN/c-GaNナノラミネート薄膜をゲート絶縁膜に用いることによって水素終端ダイヤモンド表面の高濃度正孔チャネルを用いた新概念電界効果トランジスタを開発することにあります。水素終端ダイヤモンド表面に蓄積される正孔濃度は平方センチメートル当たり1014個に達しており、従来のAlGaN/GaNヘテロ接合に較べて約1桁高いことが、当グループの研究成果からわかっています。この高濃度正孔を電界制御するためには、k=100以上を持つゲート絶縁膜が不可欠であり、AlN/GaNナノラミネート特異構造の開発が鍵を握ります。

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A02-2:特異構造結晶の特性を生かした新機能発光デバイスの研究

  • 研究代表者:平山 秀樹(理化学研究所・主任研究員)
  • 研究分担者:寺嶋 亘(理化学研究所・研究員)
  • 研究分担者:鎌田 憲彦(埼玉大学・教授)

本研究では特異構造結晶を新たに導入することにより新規発光デバイスの開拓を行います。未開拓の深紫外ならびにテラヘルツ発光素子を実現するためには、高ホール濃度p型AlGaN、極低転位AlNバッファー、原子層平坦AlGaN多重超格子の実現が必要不可欠です。本研究では、自己形成による3D特異結晶(ピラーAlNアレイ)とコドープのよる分子特異結晶(短周期超格子コドープp型AlGaN)の導入により、貫通転位密度の飛躍的低減による発光効率の向上、高光取り出し構造の実現、高濃度p型層の実現を行い、未踏の高効率(>50%)深紫外LED、深紫外レーザダイオード(LD)の実現を目指します。窒化物量子カスケードレーザ(QCL)の実現のためには、原子一層精度の多重超格子構造の形成が必要不可欠です。本研究では、原子一層精度せ制御されたAlGaN多重超格子構造(1D特異結晶)を、独自に考案した「過渡的アニールドロップレット除去成長法(DETA法)」を用いて形成し、それを用いて高い光利得を実現することで、未開拓周波数テラヘルツQCLの実現を目指します。

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A02-3:特異構造を含む異種接合の界面制御と電子デバイス展開

  • 研究代表者:橋詰 保(北海道大学・教授)
  • 研究分担者:赤澤 正道(北海道大学・准教授)
  • 研究分担者:佐藤 威友(北海道大学・准教授)

特異構造やポテンシャル障壁層を巧みに利用した窒化物半導体デバイス構造は、まさに高度な異種接合集合体です。しかしながら、特異構造が導入された異種接合界面には高密度の電子準位が導入される可能性が高く、新機能電子デバイス展開にはこの電子準位の特性を理解し制御することが必須です。
本研究項目では、ボイド、超格子緩衝層などの特異構造を含む異種接合の界面電子準位を、容量-電圧特性の厳密計算、アドミタンス測定および容量過渡測定により評価し、構造的評価(TEM, SEM, AFM)と化学的評価(XPS, SIMS)を連携させて、電子準位制御法を確立します。
さらに、図に示すように、ドライエッチングと選択成長を利用して、有極性面と無極性・半極性面を組み合わせたナノチャネル構造を形成し、側面にもチャネル層を持つ新機能トランジスタを作製・評価します。さらに、電気化学手法によりゲート直下あるいは通電電極直下にナノポーラス構造を形成し、新規センサー素子・超低抵抗通電素子展開を図っていきます。

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A02 公募研究

A02-19-1:GaNによる特異構造を利用した縦型FETの作製と高性能化に向けた評価技術の検討 

  • 研究代表者:本久 順一(北海道大学・教授)

GaN系トランジスタはパワーエレクトロニクス応用が期待されていますが、近年、縦型多重ゲート構造が、素子特性向上のため重要な構造として注目を集めています。本研究では特異構造であるGaN系ナノワイヤを利用し、その形状を活かすことによって、縦型多重ゲートFETを実現することを目的とします。このためFET応用に適したナノワイヤの形成技術およびFETの作製技術を確立させるとともに、個々の特異構造・微細構造の電気的特性を評価する手法を確立します。そして、提案評価手法を利用することによって、特異構造の電気的特性やデバイス応用上の問題点を明らかにし、解決することによってFETの高性能化を目指します。

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A02-19-2:完全結晶に存在する空間自由度および乱れが創出する機能と応用

  • 谷垣 勝己(東北大学・教授)

結晶が有する結晶の完全性と同時に存在する空間の自由度および表面・界面の局所構造としての結晶の不完全性を利用して、次の研究項目を公募班として探求します。(1)空間・間隙物質(運動の空間自由度を単結晶内に有する物質)において発現するフォノンの非調和性を統一的に理解して、高効率な熱電エネルギー変換を実現します。(2)有機半導体結晶における分子配列の乱れを利用して、金属/半導体接合におけるバーディーン極限を実現すると共に、連続した乱れ準位を創出して、有機半導体用における高効率両極性電極を創出します。そして、達成される電子と正孔の大電流注入を基盤として、高効率の有機半導体発光素子を実現します。

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A02-19-3:グラフェンの乱層構造に起因する特異物性の研究

  • 小林 慶裕(大阪大学・教授)

積層方向の周期性を乱す特異構造である乱層構造をもつ多層グラフェンを合成し、そこから単層グラフェンに類似した優れた物性を引き出すことが目的です。新奇ナノ炭素材料である低欠陥・乱層・多層グラフェンを合成するため、酸化グラフェンの超高温熱処理やテンプレートグラフェン上CVD成長という新たなプロセスを開発します。乱層構造でグラフェンシート層間の相互作用が抑制される効果を利用し、多層グラフェンの電気的・熱的物性の飛躍的な向上を目指します。本研究により、高機能グラフェン薄膜をスケーラブルに製造する技術が開拓され、エレクトロニクス材料や電極・放熱シート等の構造材料へのグラフェンの応用が可能となります。

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A02-19-4:レーザープロセス技術を利用した新奇ランダムレーザー光源作製法の開発

  • 藤原 英樹(北海学園大学・教授)

多重散乱に基づくフィードバックにより動作するランダムレーザーは、熱光源のような低空間コヒーレンスとレーザーのような高輝度を同時に実現できるため、強度ムラが無く、明るい像を取得可能な全視野イメージングやセンサー用光源として注目されています。しかし、従来のランダムレーザーは、高しきい値動作、発振モード制御が難しい、深紫外や赤外領域での報告例が少ない、といった問題があります。本研究では、レーザープロセス技術を駆使し、マクロなフィードバック構造制御だけでなく、レーザー照射時のアニール効果などの影響をも考慮することで、結晶性改善や意図的な欠陥構造導入を試みる新しいレーザープロセスの開発を目指します。

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A02-19-5:チエノイソインジゴ骨格を基本とする近赤外光応答型単結晶トランジスタの創出

  • 芦沢 実 (東京工業大学・助教)

近赤外光は高い生体透過性を示し、この領域のエネルギーを有効活用する技術が必要とされています。トランジスタの観点からは、従来のスイッチング機能に加えた高機能化が求められています。本研究は単結晶トランジスタに光熱変換現象を利用して特異構造を組み込み、近赤外光センシング機能を付与することを目的とします。本研究で開発するチエノイソインジゴ(TII)分子は、近赤外光吸収を可能にするTII骨格のオリゴマーと、アルキルシリルアセチレン基から構成されます。近赤外光を熱エネルギーに変換し、結晶構造中のアルキルシリルアセチレン部位のディスオーダーを、時分割してトランジスタ特性の変化として捉えます。

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A02-19-6:結晶不完全性の積極利用による高機能テラヘルツ帯機能素子

  • 河野 行雄(東京工業大学・准教授)

これまで高品質半導体にとって不完全性の要因であった不純物や格子欠陥等は、対応するダイナミクスの多くがテラヘルツ(THz)周波数帯に属するものの、これら不完全性を制御してTHzデバイスへ積極的に応用する試みはほとんどありません。本研究は、外場への敏感な応答性等、不完全結晶電子材料ならではの特異な特徴を活かすことで、従来にはない新規なTHzデバイスの開拓を目指します。不完全性を巧みにデザインすることで、THzデバイスの新機能付加や性能向上につなげます。

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A02-19-7:機械学習を応用した原子層物質チャネルFETのシミュレーションと最適化設計

  • 相馬 聡文(神戸大学・准教授)

グラフェン、フォスフォレン、遷移金属カルコゲナイド物質等の原子層新材料をチャネル材料として用いるFETのシミュレーションにおいて必要となる原子レベルの材料パラメータ(強束縛近似法パラメータ)の遺伝的アルゴリズム・機械学習を応用した低計算負荷抽出法、非平衡グリーン関数法に基づくデバイスシミュレータの機械学習を応用した高速化法の提案を行います。更に、原子層新材料をチャネル材料としたFET、特にディラック電子エンジニアリング素子のロジック、増幅等の異なる目的に応じたパフォーマンス最適化のための、デバイスシミュレータと機械学習を組み合わせた設計指針探索手法の確立と設計指針提案を行います。

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A02-19-8:有機-無機界面の特異構造を利用した光蓄電素子の開発

  • 石井 あゆみ(桐蔭横浜大学・特任講師)

本研究では、有機-無機結晶界面における特異構造の制御と新しい光電気化学的機能の創出を目指し、無機半導体ナノ結晶に希土類イオンと有機化合物からなる錯体を分子レベルで配列・固定させた特異界面構造を構築します。この有機-無機界面に形成した錯体の特異的な電子状態を利用し、“光により生成した電気エネルギーを界面で蓄える”機能を促します。一素子内で光発電と蓄電の両機能を実現し、光を“蓄える”ことができれば、光エネルギーの革新的かつ有効な利用方法を確立することができます。有機化合物と無機結晶からなる界面構造を緻密に制御し利用することで、新しい光機能を持つ特異構造の創出を目指します。

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