原子が欠陥なく規則正しく並んだ完全結晶を実現しようとする研究は、２０世紀に大いに進み、その成果は情報化社会の長足の発展を支える原動力となりました。我々が毎日利用しているインターネットやスマートフォンも、完全結晶が実現しなければ、この世界に存在しなかったでしょう。しかし２１世紀に入り、完全結晶を舞台とする現代エレクトロニクスの爆発的進歩にも陰りが見え始めています。新学術領域研究「特異構造の結晶科学：完全性と不完全性の協奏で拓く新機能エレクトロニクス」では、完全結晶を出発点とする従来型エレクトロニクスの概念をコペルニクス的に転回させ、これまで不要な邪魔者と思われてきた結晶欠陥に主役を担わせようと考えています。我々は、結晶欠陥は実は新しい物性の宝庫であり、これを積極的に結晶に導入することによってこれまでにない機能をもった素子が実現できるのではと期待しています。新しい欠陥を含んだ結晶の基礎概念を構築し、素子に応用していくには、世界中の物理、化学、電子工学など広範な研究者が協力し合いながら研究を進めていくことが必要だと考えます。特に斬新なアイディアを持った若い研究者のみなさんにこの分野へ飛び込んできていただきたいと考えています。一緒に未来エレクトロニクスの世界を切り拓いていきましょう。